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骨粗鬆症の検査 / 検診

骨粗鬆症検査は何科? どこで受けられる?

骨粗鬆症の診断を念頭においた骨量測定は、主に整形外科で行われることが多いです。
それ以外で受診するとなると、内科や婦人科になるでしょう。当院「むつみクリニック」がある大阪市でも同様です。

大きな病院でも、骨粗鬆症外来を設けているところはあります。小さい病院でも、専門検査機器を備えているところもあります。
あらかじめ、
「骨粗鬆症の精密検査を受けることができるかどうか」
を問い合わせてから受診すると良いでしょう。

骨粗鬆症は早期発見、早期治療が大切です。
早期から「骨粗鬆症」と診断を受けることで、適切な治療を受けることが可能となり、骨折を予防するとともに骨密度の低下を抑えられる可能性が高くなります。

今までに、骨粗鬆症検診や人間ドックにて骨密度の数値に問題があったり、姿勢や体型の変化、身長の低下、腰痛など「骨粗鬆症が疑われる兆候や症状」がある方も、一度検査可能な医療機関で正しく評価を受けてみてはいかがでしょうか。

検査と検診の違い

検診とは、「がん検診」のように特定の病気を早期に発見し、早期に治療するための二次予防の事を指します。特定の臓器などを検査することを目的とした検査です。
がん検診だけでなく、眼科検診や歯科検診などもこれに当てはまります。

一方で、検査とは、早期発見/早期治療の観点とは関係なく、ただの検査を指します。

分かりやすく言えば、検診の中に検査が含まれる、というイメージで良いと考えます。

検査と検診は似たような言葉であり、実際混同されている方も少なくありません。
当院「むつみクリニック」の場合、診療内容に大きな違いもなく、問診や診察を通じて適切な対応が可能ですのでご安心ください。

なお、大阪市における骨粗鬆症検診については、こちらの「大阪市における骨粗鬆症検診」ページで詳しく解説しています。

骨粗鬆症検査の方法

① 問診と身長測定

骨粗鬆症の診断では、さまざまな検査を行いますが、まずは「問診」と「身長測定」が基本となります。

問診

問診では、

  • 現在の症状
  • これまでの骨折の有無
  • 既往歴 (過去の病歴)
  • 女性であれば月経の有無
  • 血縁関係のある近親者の骨折の有無

などを質問します。

こうした内容は、個々の患者様の体の状態、病気の進行具合、どれくらい骨粗鬆症の危険因子を持っているか、を把握するために必要な基本的情報です。

問診時に可能な限り正確に回答していただくと、より精度の高い診断結果に結びつきますので、あらかじめ情報を整理していただいたうえで受診されることをお勧めします。

特に「近親者の骨折」は重要な情報ですので、両親/兄弟姉妹/祖父母の骨折歴について確認をしておきましょう。また、食事/運動習慣/飲酒/喫煙など、嗜好歴や生活習慣について聞かれることもあります。

身長測定

身長測定は、「椎体骨折 (ついたいこっせつ) や椎間板に変化がないか」を調べるために重要です。

壮年期以降の方は、20代の時と比べてどれくらい差があるかがポイントとなります。
こちらに関しても、できれば過去の検診結果などを調べていただき、数値を伝えられるようにしておくと良いでしょう。

高い棚への荷物の上げ下ろし、洗濯物の干し方、日常生活での椎体骨折の影響や体の使い方を聴取することも、参考情報となります。

薬の服用については、「骨粗鬆症の薬の内服歴」について聞かれることがあります。
※現在も内服中であるか、定期的に骨粗鬆症の評価を受けているか、など。

骨粗鬆症は、高血圧や脳梗塞などと違い、軽い病気とみられてしまうことが多いです。

骨粗鬆症は、途中で治療をやめてしまったり、せっかく薬を服用していても漫然と処方されているケースが非常に多いため、
「いかに治療意欲を高め、継続に繋げるか」
が大切です。

② レントゲン検査

骨粗鬆症の診断には、「単純X線 (レントゲン) 検査」も行います。

レントゲンにより、胸椎と腰椎を前後と側面から撮影し、圧迫骨折などがないかを判断します。
また、骨全体の形だけでなく、椎間板の状態、骨梁の目立ちやすさ、骨硬化の程度なども判断することが可能です。

骨粗鬆症が背景にある圧迫骨折は、痛みなどの自覚症状がなく、知らない間に進行するケースが多いです。
そのため、椎体の形状から異常を見つけることが大切なのです。

場合によっては診断の際に、MRIを用いることもあります。

MRIの検査は、放射線被曝や痛みはなく、

  • 骨折の有無や腫脹
  • 液体成分の貯留
  • 感染
  • 癌の転移

など、軟部組織異常の有無を評価することに非常に役立ちます。

ただし、レントゲンやCTに比べて時間がかかることと、高価であることがデメリットです。
そのため、患者様に必要性を納得していただいたうえで施行します。

③ 骨密度検査

骨密度検査は、骨に含まれるカルシウムを骨塩量の目安として計測することで、骨粗鬆症の進行度を確かめる検査です。
骨密度検査にはいくつかの方法があります。

DXA法 (できさほう)

骨密度検査において、診断や治療効果判定に最もよく使用されているのが、
「DXA法 (できさほう) ※」
というものです。
※DEXA法とも。

DXA法では、強さの違う2種類のX線を照射して、それぞれの透過率から骨の組成を計測します。
全身のどこの骨でも、骨密度を計測することが可能ですが、多くは腰椎と大腿骨近位部で測定します。

ときどき被曝量を気にされる方もおられますが、胸のレントゲン写真の「約1/10-1/5」とごくわずかであるため、特に心配される必要はないでしょう。

DXA法は、測定が数分程度で精度も高い、という優れた検査法です。

QUS法 (きゅーゆーえすほう)

その他の検査方法としては、「QUS法 (きゅーゆーえすほう)」というものがあります。
超音波を踵の骨に当てて、骨の強度を測る方法です。

精度としては、DXA法や次に述べるMD法には劣りますが、装置が小型かつ極めて短時間で終わるため、人間ドックや検診で使用されることが多いです。
また、放射線被爆もなく、踵にゼリーを塗って測定するだけですので、妊娠中の女性や子どもの検査にも使用可能です。

MD法 (えむでぃーほう)

この方法は、「第2中手骨」という人差し指につながる骨のレントゲン写真を撮って、画像の濃淡を解析することで、骨密度を算出する方法です。

QUS法よりは精度が上がるものの、骨粗鬆症に対しての治療効果判定に使用できなかったり、骨粗鬆症診療ガイドライン/薬剤試験などでの骨密度がDXA法による値を使用していることから、日常診療の検査としては適していないと言えます。

また、骨密度検査については、こちらの「骨密度検査について」ページで詳しく解説しています。

④ 血液検査 / 尿検査

採血検査や尿検査では、骨の代謝の状態を評価するために、「骨代謝マーカー (こつたいしゃまーかー)」やビタミンDなどの数値を測定します。

骨密度が「骨の量/形を測る」のに対し、骨代謝マーカー (こつたいしゃまーかー) では、
「どのくらい骨が壊れやすいか」
「どれくらい骨を作る力があるのか」
を知ることができます。

骨代謝マーカーには、「骨吸収マーカー」と「骨形成マーカー」の2つがあります。
また、骨代謝には、骨を壊す「骨吸収」と、骨を新しく作る「骨形成」というプロセスが存在しています。

骨吸収マーカー (こつきゅうしゅうまーかー)

骨吸収マーカーでは、
「破骨細胞 (はこつさいぼう) が、どれくらいの勢いで骨を壊しているか」
を評価します。
骨が破壊されたときに血液中や尿中に放出される、コラーゲンの分解物や破骨細胞の酵素の濃度を測定することでこれが分かります。

主に測定される項目には、以下のものがあります。

  • TRACP-5b (酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ)
  • NTx (Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド)
  • CTx (I型コラーゲン架橋C-テロペプチド)

特に「TRACP-5b」の数値は、食事の影響も受けないため、とても優れた評価項目です。

骨形成マーカー (こつけいせいまーかー)

骨形成マーカーでは、
「骨芽細胞 (こつがさいぼう) が、どれくらいの勢いで骨を作っているか」
を評価します。
骨芽細胞の酵素や、血液中の骨のもとになる「オステオカルシン」という物質を測定して、これを求めることができます。
この数値が高いと「骨を作る勢いが強い」ということになります。

代表的な項目としては、以下のものがあります。

  • BAP (骨型アルカリホスファターゼ)
  • P1NP (Ⅰ型プロコラーゲンN-プロペプチド)

骨代謝マーカーは、骨粗鬆症の診断には用いません。骨粗鬆症の状態評価や、将来の骨量減少の予測に用います。

普段の臨床ではどう用いているかというと、

  • 治療薬の開始時期の判断
  • 治療効果の判定
  • 治療薬を変更するタイミング

に用いています。

骨粗鬆症検診の受診率

2019年度の骨粗鬆症の検診受診率は、「約5%」と報告されています。

ただし骨粗鬆症検診の実施状況は、各自治体によって異なります。
対象者には案内が届くこともありますが、自治体のホームページで調べるか、市区町村の保健所、保健センター、指定医療機関などに問い合わせてみるとよいでしょう。

ここ大阪では、レセプトデータから抽出した骨粗鬆症および骨折歴のある方に向けて、行政から「骨粗鬆症検査のできる医療機関の案内」が送付されています。

骨粗鬆症を原因とする骨折は、増加傾向にあります。
その原因は、「超高齢化社会と骨粗鬆症の未治療」にあるといわれています。

骨粗鬆症検診は、厚生労働省により2003年に施行された健康増進法に基づき、開始されました。

骨粗鬆症検診率の高い自治体では、要介護率および人工骨頭挿入率が低いことが報告されており、検診が上手く機能していることが示唆されます。
つまり、骨粗鬆症検診を行い適切な治療を早期に受けることで、大腿骨近位部の骨折リスクを減らし、結果として手術を回避できるというわけです。

骨粗鬆症による骨折は、寝たきりや健康寿命を短縮する原因となり得ます。
そのため、積極的に脆弱性骨折を予防すること、つまり骨粗鬆症検診を受けることは、介護の観点からも重要です。

生活習慣を改善して健康を維持できるよう、主体的に健康づくりに取り組むことは、健康寿命を伸ばすことにもつながります。

骨粗鬆症検査の費用

骨粗鬆症検査の費用について、ここでは主に「クリニックで行う骨密度検査 (MD法およびDXA法)」の場合について説明します。

医師の診察により保険適応と判断された場合

「自己負担額: 3,000-10,000円ほど」です。
※診察料などを含んだ合計の目安。

完全自費診療の場合

初診料や採血、レントゲンなども含めて「約20,000円ほど」です。
※目安。

なお、病院によっては、骨ドックや骨粗鬆症検診を謳い、自費で行っているところもあります。
参考までに、骨密度検査の保険点数、算定基準も載せておきます。

骨粗鬆症検査の内容3割負担時1割負担時
DEXA法による腰椎および大腿骨撮影 (450点)1,350円450円
MD法やSEXA法等 (140点)420円140円

なお保険診療であれば、上記に加えて、

  • 初診料
  • 再診療
  • 外来管理加算
  • 採血
  • レントゲン

などの費用が加わることになります。

保険適用となるかどうかは、各施設や担当医によって判断が異なる場合もありますので、お問い合わせをしていただいて確認することが確実でしょう。

最後に

本記事では、「骨粗鬆症の検診 / 検査」についてまとめました。

骨粗鬆症治療の目的は、骨折を予防し、それによって「QOL (Quolity Of Life)」や「ADL (Activity of Daily Living)」を維持することです。

世界的な平均寿命の延びに伴い、大腿骨近位部骨折の発生率は、継続的に増加すると予想されています。
※参考文献: (1) (2)

我が国の高齢者人口は、増加傾向です。
65歳以上の人口が総人口に占める割合は、2020年に「28.8%」にまで達しました。
※参考文献: (3)

骨粗鬆症が治療開始となるほとんどの症例が、骨折が起きてから介入されています。
ですが本来なら、骨折が起こる前に未然に予防することが理想です。

そのためにも、骨粗鬆症の治療経験が豊富な施設や医師の診察を受けることから始めてみてはいかがでしょうか。

【参考文献】

  • (1) Cooper C, Campion G, Melton LJ 3rd: Hip fractures in the elderly: a-world wide projection.Osteoporos Int 2: 285-289,1992
  • (2) Cauley JA,Chalhoub D, Kassem AM, et al: Geograghic and ethnic dispatities in osteoporotic fractures.Nat Rev Endocrinol 10: 338-351,2014
  • (3) 総務省統計局: 人口推計 - 2020年11月報. 2020