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骨粗鬆症の専門外来

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ご挨拶

みなさんは骨粗鬆症というと、「骨がスカスカ」「骨折しやすい」というイメージをお持ちになるかと思います。原因としては、高齢化が挙げられ、2040年には我が国において85歳以上の人口は1000万人を超えると試算されています。

特に女性においての骨粗鬆症患者割合が高く、これに関しては女性ホルモン (エストロゲン) が、閉経に伴い低下してしまう影響が大きいです。
また、介護が必要となる方の原因として、転倒や骨折は認知症や脳血管障害と同じく大部分を占め、介護による本人・家族の負担、社会の負担が問題となっていることが広く知られています。

当院「むつみクリニック」では開院以来、骨粗鬆症の専門外来を設置しています。

  1. 積極的に骨粗鬆症診療を行い、病態を理解するとともに治療意欲を高めていただく。
  2. 骨折を予防し、健康寿命を伸ばす。
  3. よりよい人生を歩んでいただく。

このことを使命 (ミッション) として、日々診療に取り組んでいます。

ここ大阪に限らずどの地域でも、骨粗鬆症の専門医や名医、有名病院をお探しされている患者様は多いです。
僭越ながら、当院がそのような条件に該当すると断定できるわけではありませんが、少なくとも骨粗鬆症でお悩みの方や気になる方にとって適切なアドバイス、診療を提供していきたいと思っています。

実際に開院以来、骨粗鬆症で悩まれるたくさんの方に受診していただき、定期的に遠方より通院される方も中にはおられます。
「骨粗鬆症が心配だ」
「骨粗鬆症の治療が必要と言われたけれど、どこで診てもらえばよいか分からない」
そのような方がおられましたら、お気軽に当院の骨粗鬆症専門外来でご相談ください。

骨粗鬆症治療の目的

たかが骨折くらいで大したことない、と思われる方もいまだ多いのが現状です。
高血圧や糖尿病などと同様に、骨粗鬆症は自覚症状がありません。

背中が丸くなって身長が低くなり、腰や背中が痛むと人生の楽しみが減ります。
椎体骨折 (背骨の骨折) や、大腿骨近位部骨折 (足の付け根、股関節の骨折) をいったん起こしてしまえば、歩行や移動能力が低下します。

さらに、骨折の起きない場合と比較して、大腿骨近位部骨折が起こると死亡リスクは6.7倍、椎体骨折が起きると8.6倍高まるという報告もあります。(参考文献 ※1)

その結果として健康寿命が短縮し、QOL (Quolity Of Life; 人生の質) が低下します。
さらに、介護も必要となり、ご家族の負担が増加します。

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症は大きく分けて、

  • 原発性骨粗鬆症
  • 続発性骨粗鬆症

この2つのタイプに分けられます。

原発性骨粗鬆症は、主に加齢や閉経によって生じ、喫煙や飲酒など生活習慣も関連します。
続発性骨粗鬆症は、骨に悪影響を与える薬や病気が原因となり代表的なものとして、ステロイドの使用、糖尿病、慢性腎臓病、関節リウマチが挙げられます。

骨密度と骨強度

「骨密度が低ければ、骨折しやすい」ということは理解しやすいと思います。
ただ、骨粗鬆症の方のなかには、骨密度が低くなくても骨折したり、骨密度が低いにもかかわらず繰り返す転倒で骨折していない方がいます。

つまり、骨密度の値だけでは、骨折のしやすさを説明できないことになります。
例えば、同じガラスコップでも、強化ガラスでできた素材か普通のガラスかで、割れやすさが違うことを考えてみれば分かりやすいと思います。

そこで考えられたのが、「骨質 (こつしつ)」という概念です。
骨強度 = 骨密度 + 骨質
骨質とは、骨の構造や材質のことを意味し、骨強度の約30%を担っています。

「高齢者の骨」と「若い人の骨」を、枝に例えてみましょう。

  • 老木は、かたくて折れやすい。
  • 若い枝は、しなやかで折れにくい。

このことは、人間の骨にもあてはまります。

また、上記で触れた糖尿病や慢性腎臓病などの疾患は、骨の材質を著しく悪化させることが知られています。

むつみクリニックにおける専門外来の特徴

当院「むつみクリニック」における骨粗鬆症専門外来の特徴は、骨粗鬆症の診断や治療だけにとどまりません。

患者様ご本人にも、病識を理解していただくことを重要視します。
場合によっては、運動療法や栄養指導もあわせて行い、日常生活への指導介入も行います。

医療者と患者様、時にはそのご家族も含めて同じ目線に立ち、治療を行うことを目指します。

骨粗鬆症という誰にでも起こる可能性のある出来事に対して、発症する前の段階から予防をしますが、診断および発症に至ってしまっても早急に対応することで、骨折の連鎖 (ドミノ骨折、続発性状骨折と呼びます) を防ぎます。

骨粗鬆症は、慢性疾患です。
そのため、高血圧や慢性心不全、慢性腎不全などと同じく、一生に渡って付き合ってゆく必要があります。

骨粗鬆症およびその関連する症状に対して、診断や投薬、リハビリ、場合により手術を行うことがありますが、患者様自身にも以下の項目に積極的に関わっていただくことが大切です。

  1. 生活習慣を見直す。
  2. 日々の食事に気をつける。
  3. 運動習慣を身につける。

医療機関では薬物療法が中心となることが多いですが、薬だけによる治療だけでは不十分です。
個々の患者様に応じた、テーラーメイドな医療が必要とされます。

診察の流れ

当院の外来では、まず問診表を記入していただきます。

また、ウェブでの問診も行っています。
ご自宅にいながらでも、当サイトや公式LINEからご利用が可能です。
※ウェブでの問診をご希望の方は、こちらのリンクからお進みください。

事前に問診の記入が困難な場合は、診察室にて医師より聞かせていただきます。

次に、腰椎レントゲンや骨密度検査での結果から、骨粗鬆症診断ガイドラインに照らし合わせて骨粗鬆症の診断を行います。

さらに、必要であれば、血液や尿検査で骨代謝マーカーおよび全身の状態を把握します。

上記すべての結果をふまえて、年齢や性別、生活様式 (独居、通院頻度、距離、家族のサポートが受けられるか、要介護度など) などを考慮し、個々の患者様に合った治療方針を決定します。

骨折リスク評価ツール (FRAX®)

FRAX® (fracture risk assessment tool) とは、2008年にWHOが開発した、骨折の発症リスクを評価する方法です。(参考文献 ※2)
質問事項に沿って、個人にあてはまる項目を入力していくと、直近10年以内の主要な骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の発生リスクを数値で知ることができます。

FRAX ®は、こちらのリンクからご利用ください。
骨密度を入力する項目もありますが、空欄でも大丈夫なので、一度スマホやパソコンから調べてみてはいかがでしょうか。
※インターネット環境さえ整っていれば、いつでもどこでも調べることが可能です。

このFRAX ®の活用法ですが、日本では2011年度版の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」において、
「骨密度がYAMの70%以上80%未満で、FRAX ®で算出された骨折リスクが15%以上」
の場合を、薬物治療開始基準とすることが新たに明記されました。

ただしFRAX ®は、高齢になるほど15%を超える可能性が高くなるため、薬物開始基準として用いる場合は75歳未満の方が対象です。

地域医療機関の先生の皆様へ

骨粗鬆症の診断、検査を希望とされる患者様がおられましたら、いつでも当院へご紹介ください。

また、すでに骨粗鬆症治療をされている患者様においても、効果判定をすることなく漫然と薬物治療を行うことはお勧めできません。
治療効果判定のために、DXA検査を施行する必要があります。

遠方の医療機関にてDXA検査のために通われている方に関しても、もし当院へのアクセスが便利であればぜひご利用ください。

結果をお伝えしたうえで、引き続き今までの医療機関で治療継続していただきます。
また、既存の治療においても治療効果が認められないようであれば、内科的疾患など全身状態を考慮したうえで、薬剤変更などの必要性もお伝えさせていただく場合もあります。

こうした医療機関の連携は、結果として患者様にとって病識の理解、治療継続率の向上のためにメリットがあると考えています。

骨粗鬆症治療にあたり広く知ってもらうことが大切

骨粗鬆症の啓蒙活動において重要なことは、医療者も含め多くの方の骨粗鬆症への意識を高め、検診率をあげて治療率の増加に導くことと考えます。

検診の結果、骨折リスクの低い方は、今後も定期的な節目年齢で検診を受けるとともに日々の生活、食事、運動を意識して過ごしていただく。

骨折リスクの高い方は、今までまったく骨に関して受診歴がなければ、骨粗鬆症治療に携わる医師の診察を受けるとよいでしょう。
治療を中断されている方であれば、治療継続のために定期的に骨粗鬆症外来に通院することが大切です。

医師をはじめ、多職種が関わることで、骨粗鬆症治療を展開する骨折リエゾンサービス (osteoporosis liaison service:OLS) の活動も、各地で活発化してきています。
骨折リエゾンサービスをきっかけとして、啓蒙活動や骨折予防に取り組み、市民全体の骨粗鬆症に対する病識の理解を高め、結果として健康寿命を延ばすことにつながると考えています。

骨粗鬆症の治療が健康寿命を延ばす

骨粗鬆症は、加齢とともに進行することの多い疾患です。
予防のためには、若いころから食事や運動に気をつけることが大切です。

しかし、若くして骨粗鬆症と診断されたり、加齢により骨粗鬆症に至った方でもあきらめる必要はありません。
薬物療法とともに食事療法や運動療法を行うことで、骨密度を高めて骨質を改善し、結果として骨強度を向上させる。

このように、「結果として骨折を防ぐこと」は可能です。
また、より強力な効果を持つ薬も、近年では使用できるようになってまいりました。
もちろん、室内の環境調整や介護サービスやリハビリなど、医療者だけでなく多職種の連携が必須となることは言うまでもありません。

大切なことは、あきらめずに地道にこつこつと取り組むことが重要です。
劇的な改善は得られなくても、日々こつこつと取り組むことが生活習慣の改善につながり、運動の習慣化、適切な食事摂取 (適正カロリーの摂取) 、結果として身体機能や骨密度の上昇をもたらします。

最後に

骨粗鬆症治療だけに時間や精神を費やすのではなく、治療をする過程で、日常生活を楽しむ精神的余裕も大切です。
骨粗鬆症の治療の柱である運動療法や食事療法は、生活習慣病、例えば高血圧や肥満、腎臓病などにとっても役立ちます。

治療にしっかり取り組むことで、元気な体を維持して健康的な生活を送り、明るく楽しい人生を歩んでいきましょう!

【参考文献】

  • ※1 Cayley JA,et al.: Osteoporos Int.2000;11(7): 556-561
  • ※2 Klotzbuecher CM et al.Patients with prior fractures have an increased risk of future fractures: a summary of the literature and statistical synthesis.J Bone Miner Res.2000;15: 721-39
  • 寺元秀文他; 行政と連携した骨粗鬆症の予防、治療の普及と継続への取り組み.The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.8 No.2 2022.130-134
  • 石川哲大; 多職種連携による骨折予防への取り組みの実際. The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.8 No.2 2022.135-139
金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

2009年、大阪市立大学医学部卒業後、名古屋第二赤十字病院で研修。大阪に戻りPL病院、リハビリ病院などで研鑽を積む。急性期から慢性期まで経験し、手術だけでなく在宅医療にも携わる。2021年、むつみクリニックを継承開業。