06-6686-7623

骨密度検査について

更新日:

骨密度検査はどこで受けられる?

骨密度検査はどこで、何科で受けることができるのでしょう?

多くの方は、整形外科が思い浮かぶと思います。
ただ実際には、整形外科でも骨密度検査ができない施設があったり、内科や産婦人科で骨密度検査ができるところもあります。

骨粗鬆症は合併症である骨折が起きるまでは何の症状もありません。つまり、高血圧のように沈黙の疾患と言えます。
逆に、骨粗鬆症の存在を疑って診療を進めることは、どの診療科でも可能です。
「診療する側の骨粗鬆症に対する意識の高さ」が、最も重要と言えるでしょう。

ここ大阪においても、調べれば数多くのクリニックで骨密度検査が可能になっています。
また、骨密度検査の方法については、施設によってまちまちです。

整形外科にかかわらず、骨密度検査が可能な施設がありますので、ホームページやSNS、電話などで調べてみてはいかがでしょうか。
なお、当院「むつみクリニック」でも、骨粗鬆症専門外来を設けています。ご希望の方はお気軽にご相談ください。

まずは問診と身長測定

骨粗鬆症の診断では様々な検査を行いますが、まずは医師による問診や身長測定があります。

問診では、

  • 現在の症状
  • これまでの骨折の有無
  • 既往歴
  • 女性であれば月経の有無
  • 近親者の骨折の有無

などを聞く必要があります。

これらのことを通じて、患者様のお体の状態や病気の進行具合、どれくらい骨粗鬆症になりやすいかを把握することが可能になります。
特に近親者の骨折歴は非常に重要な項目ですので、両親や兄妹、祖父母の骨折歴などは調べておいて答えられるようにしておいた方が良いでしょう。
また食事や運動、飲酒、喫煙などの生活習慣についても聞く必要があります。

身長測定では、椎体骨折 (背骨の骨折の有無) や椎間板に変化がないかどうかを調べるために行います。できれば、過去の検診結果などを参考にして、自身の身長の変化を伝えられるようにしておくと良いでしょう。

骨密度検査方法の違い

一般的に骨密度の検査は、どこの整形外科でも受けられるわけではありません。
また、置いている骨密度測定器や測定部位もさまざまです。内科クリニックでも、測定可能な施設があるようです。

検査方法にも違いがありそれぞれにメリット、デメリットがあります。
以下に、各検査方法を詳細に説明していきます。

骨密度検診の方法①「MD法」

MD法 (microdensitometry) 法は、第二中手骨 (人差し指につながる手の甲の骨) をX線撮影し、画像上の濃淡や皮質骨の幅から骨密度を判定する方法です。
両手の間に骨密度の基準となる階段状のアルミ板を置いて、X線撮影を行うだけで短時間で簡単に終えることができます。MD法で判定する中手骨の骨幹部は、骨粗鬆症の影響を受けにくい骨ですが、大規模な調査で有効性が示されています。

MD法で骨密度が低下している場合、その後に骨折する確率が増えるとされています。後述するDXA法と同じく、若年成人平均の70%未満で骨粗鬆症、70-80%で骨量減少と判断されます。
ただし、感度が低いため、治療効果の判定には用いることはできないことが難点です。

骨密度検診の方法②「QUS法」

QUS (quantitative ultrasound) 法は、定量的超音波骨量測定法ともいい、骨に超音波をあてて、伝わる速さや超音波の減衰する程度から骨量を測定する方法です。
一般に音は、硬いものほど早く伝わり、弱くなりにくいという性質があり、QUS法はこの原理を使った測定方法になります。
この測定法は骨の硬さを評価するため、骨質も評価できると考えられています。

現時点では、海綿骨の多い踵骨を測定することが多く、放射線を用いないことから、地域の講習会やイベント、市の骨粗鬆症検診などで用いられています。

しかしながら、MD法と同様に感度が高くないことから、スクリーニングとして利用されるのみで、正式な骨粗鬆症の診断には使用されません。
また、DXA法とは測定原理も部位も異なるので、結果が一致しないこともしばしばです。

骨密度検診の方法③「DXA法」

大阪市に位置している当院「むつみクリニック」では、骨粗鬆症の精密検査としてDXA (デキサ) 法を用いています。

DXA法とは、二重X線吸収法ともいい、日本骨粗鬆症学会においても骨密度の測定方法として推奨されている方法です。
骨粗鬆症の診断は、DXA法による腰椎または大腿骨近位部の骨密度の測定をすることが望ましいとされており、ほかの骨密度測定器に比べ、精度の高い結果を得ることが可能です。
ガイドラインでの骨密度や研究対象となるデータも、DXAを用いた骨密度で評価していることがほとんどです。

では、このDXA法とはどのような検査方法なのでしょうか?
2種類のエネルギーのエックス線を用いて骨密度を計測する方法で、放射線を用いるものの、被ばく量は胸部エックス線の数十分の一というごくわずかとなっています。

また、この測定法は全身の骨密度を測定することができますが、一般には腰椎正面と大腿骨近位部の測定に用いています。
それぞれの部位の測定値が、「若年成人の平均値の70%未満の場合」は骨量減少と判定します。
腰椎と大腿骨近位部で結果が異なる場合は、最も低いところで判断します。

各自治体などで骨粗鬆症検診で要精密検査となった方は、医療機関にかかる際、腰椎や大腿骨が測定できるDXA装置があるかどうかを調べてから、受診をされることをおすすめします。

参考までに、当院が位置する大阪市での骨粗鬆症検診を行った結果、要精密検査となった場合に受け入れ可能な医療機関は以下のリンクからご参照ください。いずれの施設もDXA検査可能です。
・大阪市のホームページより抜粋 (リンクはこちら)

このように、骨粗鬆症の検査にはいくつかの測定方法があり、専門の知識がなければどれも同じだと思ってしまいがちです。
そのため、骨粗鬆症の知識や治療経験が豊富かつ測定方法の違いも理解している医師にみてもらうことが重要です。

骨代謝と骨粗鬆症

骨は一生の間、休むことなく古い骨を壊し、新しい骨をつくって入れ替えています。
おおよそ1年間で、骨の約10%が新しくなるといわれています。

骨の代謝作業は、「破骨細胞」と「骨芽細胞」という2つの細胞が受け持っています。

破骨細胞は、もとは血液系の細胞が大きくなった多核細胞です。骨の表面にはりつき骨を溶かすことを「骨吸収」と呼びます。
破骨細胞の骨吸収作業が進むと、骨のへこんだ部位に骨芽細胞が集まります。集まってきた骨芽細胞はコラーゲンを分泌しハイドロキシアパタイトを沈着させて骨を形成します。このことを「骨形成」と呼びます。

この「骨吸収→骨形成→休止」のサイクルを、「骨代謝回転」または「骨のリモデリング」といいます。(上図のイラストを参照)

骨粗鬆症専門外来では、デキサ (DXA法) による骨密度検査だけでなく、採血で骨代謝マーカーを測定したり、問診で既往歴や家族歴を聴取することで、現状を評価する事が可能です。
当院「むつみクリニック」での骨粗鬆症治療においても、定期的に骨密度検査を行ったり、採血でカルシウム、リン、ビタミンDや骨代謝マーカーを評価することで、治療薬の効果がしっかり出ているか、薬剤変更の必要があるかどうかを判断しています。

骨密度の年齢別平均値

骨密度の検査は何歳から受けることができるか。これは、希望があればどなたでも検査可能です。

骨粗鬆症の早期発見という意味で検査する場合でしたら、女性では50歳前後を平均とする閉経期から測定することがのぞまれます。
男性についても、生活習慣病による骨質劣化、ステロイドの内服など色々な要因が関与してくることが多くなる60歳頃から測定することがのぞましいでしょう。

ただし、基本的には自費となると思いますが、医師の診察や問診などで保険適応となるケースもあるので、一度受診される施設で確認したほうがよいでしょう。

また、多くの自治体においては、40歳から70歳の年齢に該当していれば、骨密度の検査を5年毎に受けることが可能です。(節目検診と呼びます)
こういった検査では、診断するうえで「骨密度」と「骨折の有無」が非常に重要な要素となります。

まず大事なのが、骨がもろくなる事によって起きる脆弱性骨折の有無とその部位です。
椎体骨折 (背骨の骨折) あるいは大腿骨近位部骨折 (脚の付け根の骨折) がある場合は、それだけで骨粗鬆症と判断されます。
すなわち、背骨の圧迫骨折や足のつけ根を骨折したことがあると、速やかに骨粗鬆症の治療が必要となります。

他にも骨粗鬆症と診断される場合があります。
肋骨や骨盤、腕の付け根、手首などの部位の骨折も脆弱性骨折の一部であり、これらの骨折の既往に加えて、骨密度検査で骨密度が低いと骨粗鬆症と診断されます。

基本的に骨密度検査では、年齢別の平均値 (数値) で結果が表示されます。
そのなかでも、特に重要な判断材料となるのが若年女性の骨密度平均値になります。

検査結果としてお渡しするレポート用紙には、YAM (Young Adult Mean; 若年成人平均値) と表された項目があります。YAMは、20-44歳の若年女性の骨密度の平均値になります。
このレポートには、女性の骨密度の年齢別の平均値がグラフで表示されており、同年代および若年女性と比較した場合の数値が表示されています。

骨密度検査の見方

椎体骨折や大腿骨近位部骨折を起こしたことのある方は、骨密度に関わらず、それだけで骨粗鬆症と判断します。

それ以外の脆弱性骨折を起こした人は、YAMを100%として、骨密度が80%未満の状態で骨粗鬆症と診断します。
また、脆弱性骨折がない場合でも、骨密度が「YAMの70%以下の場合」には骨粗鬆症と診断します。

もう1つ重要な評価項目に、「Tスコア」というものがあります。
Tスコアとは、骨密度が若年成人女性の平均値を正常として、どれくらいの隔たりがあるかを標準偏差 (SD) として表したものです。
そして、Tスコアが「マイナス2.5SD以下の場合」も骨粗鬆症と診断します。

レポート用紙には、若年成人女性の平均値ではなく、同年代の骨密度平均値と比較した数値も表示されています。
ほとんどの方が閉経期以降、60代や70代の方、それ以上に該当するかと思います。

あくまで骨密度検査の正常値は、YAM値を基準として考えますので、同年代と比較した数値は診断において重要な意義を持つことは少ないです。
検査の結果、高齢にも関わらずYAM値が100%を超えていたり、高い数値を持つ方もいます。

特に腰椎の骨密度では、100%を超えることが多いです。
腰椎の特徴として、変性による骨棘や骨硬化のために数値が高くでがちになります。このあたりについては、今後も精度向上が望まれます。

そして、これらの骨密度検査の結果をもとに治療方針を決定します。

骨密度検査の費用

ここでは、無料検査や、低価格で行っている自治体による簡易の骨密度検査については触れず、主にクリニックで行う骨密度検査 (MD法およびDXA法) について説明します。

完全に自費診療であれば約20,000-40,000円ほど (目安) 、医師の診察により保険適応と判断されれば自己負担5,000-10,000円ほどとなります。(DXA法の場合)
なお、病院によっては骨ドックや骨粗鬆症検診を謳い、自費で行っているところもあります。

参考までに骨密度検査の保険点数、算定基準を載せておきます。

DEXA法による腰椎撮影 (360点)

注… 同一日にDEXA法により大腿骨撮影を行った場合には、大腿骨同時撮影加算として、90点を所定点数に加算する。 

MD法、SEXA法等 (140点)

1点10円の計算となりますので、DEXA法であれば4500円、MD法で1400円 (3割負担でそれぞれ1350円、420円) となります。

保険診療であれば、上記に加え初診料、再診療や外来管理加算、採血、レントゲンなどの費用が加わることになります。
保険適用となるかどうかは各施設、担当医により判断が異なる場合もあるため、実際に問い合わせて確認をすることが確実です。

骨密度検査を通じて骨折を防ぐことが大切

骨粗鬆症と骨折の関係は、

  • 高血圧と脳卒中の関係
  • 血糖値と糖尿病の関係

とよく似ています。

高血圧だけでは自覚症状はありませんが、脳卒中や心筋梗塞を引き起こさないために血圧のコントロールが必要です。
また、糖尿病が進行すると眼が見えなくなったり、腎臓の機能が低下して透析が必要となったりします。そうならないために血糖値のコントロールが必要です。
このように骨粗鬆症についても、高血圧や糖尿病に気をつけるように、日常生活の中で注意を払うことが重要なのです。

骨折については、どうしても「たかが骨折」とすまされてしまうことが多いですが、甘く考えるのは非常に危険です。骨折の部位によっては、生命予後を左右する(骨折する事で寿命が短くなることがはっきりしている)場合もあるためです。

足の付け根 (大腿骨頚部または大腿骨近位部と呼びます) が骨折した場合は、要介護や寝たきりになることが多く、女性の要介護、寝たきりの原因の約20%程度を占めています。

腰や背中 (腰椎や胸椎、脊椎) の圧迫骨折も、強い痛みでしばらく動けなかったり、その後も数か月痛みが続く事があります。すると、全身の筋力や活動性が低下し、ケガをする前の状態に戻ることが難しくなるでしょう。

一度骨折をおこしたことがある方は、続けて骨折を起こす確率が高くなり、この状態を続発性骨折と呼びます。将来、寝たきりにならないために、骨粗鬆症と骨折に気をつけましょう。

【参考文献】

  • 石橋英明 よくわかる最新医学 骨粗鬆症の最新治療
金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

2009年、大阪市立大学医学部卒業後、名古屋第二赤十字病院で研修。大阪に戻りPL病院、リハビリ病院などで研鑽を積む。急性期から慢性期まで経験し、手術だけでなく在宅医療にも携わる。2021年、むつみクリニックを継承開業。