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大阪市における骨粗鬆症検診

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検診体制

大阪市における骨粗鬆症の検診体制は、行政や民間機関による健康診断などで骨密度を測定する場合、主に踵 (かかと) の骨を調べることが多いです。
大阪に限らず、全国的にも同じような体制であることが多いです。

これは検査機器自体が、スペースをあまり必要とせず検査方法も簡便かつ早いことによるものだと考えます。
「銀行で測定したことがある」という方もいらっしゃいます。

この検査結果がある一定値を下回ったり、境界線であれば、整形外科を受診するよう勧められることがほとんどでしょう。
場合によっては、整形外科でなく内科などの場合もあるかもしれません。

大阪市では、各地域の保健福祉センターにおいて無料で骨粗鬆症検診を行うことが可能です。
対象者は『年度末現在で18歳以上となる市民』となります。市のホームページから検診実施日および予約状況を確認することも可能ですのでぜひご覧ください。
また、検診結果は当日にもらうことができます。この結果が【要精密検査】となった方は、精密検査を実施する市内の協力医療機関(※)での受診を案内されます。
※大阪市骨粗しょう症検診要精密検査協力医療機関。

当院「むつみクリニック」はこの協力機関に含まれておりますので、お近くにお住まいの方、または当院での精密検査を希望の方は、検診結果を持参のうえお越しください。
※令和5年4月18日時点では、リストが令和3年度版になっているため当院は掲載されておりませんが、最新版リストには掲載される予定です。

大阪市で検査可能な医療機関は、上で述べたように市のホームページから確認する以外には、行きたいクリニックのホームページを調べたり、電話で確認するとよいでしょう。

整形外科であれば、すべてのクリニックで骨密度が測定できるわけではありません。その一方、骨密度測定が可能な内科クリニックもあります。

骨密度検診の方法

骨密度検査については方法がいくつかあり、最も推奨される方法は「DXA (デキサ) 法」です。
ただし、自治体で行われる方法は、「MD法」「QUS法」が大半となります。
それぞれの方法の違いについて解説します。

骨密度検診の方法①「MD法」

MD法 (microdensitometry) 法は、第二中手骨 (人差し指につながる手の甲の骨) をX線撮影し、画像上の濃淡や皮質骨の幅から骨密度を判定する方法です。
両手の間に骨密度の基準となる階段状のアルミ板を置いて、X線撮影を行うだけで短時間で簡単に終えることができます。MD法で判定する中手骨の骨幹部は、骨粗鬆症の影響を受けにくい骨ですが、大規模な調査で有効性が示されています。

MD法で骨密度が低下している場合、その後に骨折する確率が増えるとされています。後述するDXA法と同じく、若年成人平均の70%未満で骨粗鬆症、70-80%で骨量減少と判断されます。
ただし、感度が低いため、治療効果の判定には用いることはできないことが難点です。

骨密度検診の方法②「QUS法」

QUS (quantitative ultrasound) 法は、定量的超音波骨量測定法ともいい、骨に超音波をあてて、伝わる速さや超音波の減衰する程度から骨量を測定する方法です。
一般に音は、硬いものほど早く伝わり、弱くなりにくいという性質があり、QUS法はこの原理を使った測定方法になります。
この測定法は骨の硬さを評価するため、骨質も評価できると考えられています。

現時点では、海綿骨の多い踵骨を測定することが多く、放射線を用いないことから、地域の講習会やイベント、市の骨粗鬆症検診などで用いられています。

しかしながら、MD法と同様に感度が高くないことから、スクリーニングとして利用されるのみで、正式な骨粗鬆症の診断には使用されません。
また、DXA法とは測定原理も部位も異なるので、結果が一致しないこともしばしばです。

骨密度検診の方法③「DXA法」

大阪市に位置している当院「むつみクリニック」では、骨粗鬆症の精密検査としてDXA (デキサ) 法を用いています。

DXA法とは、二重X線吸収法ともいい、日本骨粗鬆症学会においても骨密度の測定方法として推奨されている方法です。
骨粗鬆症の診断は、DXA法による腰椎または大腿骨近位部の骨密度の測定をすることが望ましいとされており、ほかの骨密度測定器に比べ、精度の高い結果を得ることが可能です。
ガイドラインでの骨密度や研究対象となるデータも、DXAを用いた骨密度で評価していることがほとんどです。

では、このDXA法とはどのような検査方法なのでしょうか?
2種類のエネルギーのエックス線を用いて骨密度を計測する方法で、放射線を用いるものの、被ばく量は胸部エックス線の数十分の一というごくわずかとなっています。

また、この測定法は全身の骨密度を測定することができますが、一般には腰椎正面と大腿骨近位部の測定に用いています。
それぞれの部位の測定値が、「若年成人の平均値の70%未満の場合」は骨量減少と判定します。
腰椎と大腿骨近位部で結果が異なる場合は、最も低いところで判断します。

各自治体などで骨粗鬆症検診で要精密検査となった方は、医療機関にかかる際、腰椎や大腿骨が測定できるDXA装置があるかどうかを調べてから、受診をされることをおすすめします。

骨粗鬆症は早期発見/早期治療が重要

骨粗鬆症は女性に多い疾患であり、その数は男性の約3-4倍です。
そのため、他の生活習慣病と同じく検診による早期発見、早期治療や対策が重要です。

また、将来的に骨粗鬆症を引き起こす可能性の高い女性に関しては、若いときから過度なダイエットや偏食を行うことなく、最大骨量を増やすことを意識して生活することが重要です。

骨粗鬆症 (骨粗しょう症) は、

  1. 原発性骨粗鬆症
  2. 続発性骨粗鬆症

の2種類に大きく分けることができます。そしていずれの場合も、骨密度の低下と骨質劣化による骨強度の低下が認められます。

原発性骨粗鬆症は、加齢およびそれと並行して起こる性ホルモンの低下を主因とするのに対して、続発性骨粗鬆症は、原因となる基礎疾患が存在するものを指します。
続発性のうち、とりわけグルココルチコイド過剰によるクッシング症候群や糖尿病、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) や慢性腎臓病などの生活習慣病においては骨質劣化の関与が大きくなります。

大阪市骨粗鬆症検診要精密検査協力医療機関では、骨密度の測定方法として主に「DXA法 (デキサ、DEXA)」を用いて測定します。
これは、日本骨粗鬆症学会だけでなく、世界的にも推奨されている骨密度測定方法となります。

DXA法で測定する部位は、

  • 下位腰椎
  • 大腿骨近位部

となっていますが、この両部位はどちらも骨折すると、脆弱性骨折と呼ばれる部位になります。
これは生命予後とも相関しており、前述した部位の骨折を起こすと、健康寿命や生命寿命が短くなったり、寝たきりや要介護状態に陥りやすいことが分かっています。
そのため、腰椎や大腿骨近位部骨折を起こさないよう予防することが重要であり、既に起こしてしまった方であっても、続発性骨折 (骨折の連鎖) を防ぐことが重要になってきます。

また上記の検診において【経過観察】となった方に対しても、今後の食生活に関するアドバイス、栄養バランスのとり方などを、管理栄養士から5分ほど話してもらうことができます。

また経過観察となった場合でも、年に1回は検査を受けることをお勧めします。
食事療法や運動療法で骨密度を向上させることは難しく、定期的に自分の骨の状態を評価し、適切な治療介入時期を逃さないことが重要と考えられるからです。
当院「むつみクリニック」では、上記のDXA法で骨密度を評価しており、必要な方は採血で骨形成マーカーや骨吸収マーカーを測定し、骨代謝を評価しています。

大阪市の骨粗鬆症検診で要精密検査となった方については、追跡調査として、どのような治療内容、診断結果に至ったかを大阪市にフィードバックするシステムになっており、行政と連携を取ることで精密検査協力医療機関としての役割を果たしています。

骨粗鬆症認定医と専門外来

大阪市には数多くの整形外科クリニックがありますが、そのなかでもいくつかのクリニックにおいては「骨粗鬆症の専門外来」が用意されています。
また、なかには内科の先生が担当されているところもあるようです。

また、日本骨粗鬆症学会に登録している認定医は2020年時点で1,360名となっており、これらの医師は骨粗鬆症診療および治療に対して一定の知識や経験を要すると考えてよいでしょう。
当院「むつみクリニック」では、骨粗鬆症専門外来を設置するとともに、日本骨粗鬆症学会所属の整形外科専門医が担当しております。

ご自身の骨の悩みだけでなく、ご家族の身体を不安に感じ来院される方も多いです。
既に他院で治療されている方でも、前医での検査結果やお薬手帳をお持ちいただければ、必要に応じて再評価、アドバイスなども可能ですのでお気軽にご相談ください。

骨粗鬆症検診は「二次性骨折」の予防につながる

高齢化による骨粗鬆症の進展と課題

近年、高齢化が進み、骨折予防や骨粗鬆症治療の重要性がクローズアップされるようになりました。

現在、脆弱性骨折の代表である「大腿骨近位部骨折」の手術数は、整形外科手術の中で約20%を占めています。
大腿骨近位部骨折は、急性疾患であり国際的には「hip attack」と呼ばれています。

それまで元気にしていた高齢者が、突然に移動能力を奪われ、QOLやADLが大きく低下し、最終的には健康寿命を短縮させることにもつながります。
加えて、療養の長期化による経済的な損失からも、骨粗鬆症への対策は国を挙げて取り組むべき課題となっています。

骨折の連鎖を呼ぶ二次性骨折

骨粗鬆症対策と同様に、初発骨折後の「二次性骨折の予防」も大変重要な課題となります。
初発骨折が再発リスクとなり、骨折が骨折を呼び、これを繰り返すことで、

  • 要介護
  • 寝たきり
  • そして死に至る

という最悪のケースは決して珍しくありません。
そのための施策の1つとして、骨折予防を目的とした骨粗鬆症検診が大変重要となってきます。

しかしながら、骨粗鬆症検診は、ここ大阪市においても生活習慣病と比べてまだまだ不十分な実態があります。
すでに骨折を起こしている患者様は、治療のために来院されるため、その機会を利用して骨粗鬆症の継続治療につなげることが二次性骨折予防に有効と言えます。

骨折リエゾンサービス (FLS) による二次性骨折の予防

骨折リエゾンサービス (FLS) は、脆弱性骨折に対する骨粗鬆症治療開始率、および治療継続率を上げるとともに、リハビリテーションの視点から転倒予防の実践により、二次性骨折を防ぎ、骨折の連鎖を断つことを使命としています。

FLSは、二次性骨折予防の重要性が認識されるなか、その解決方法として世界的に普及しました。
チームメンバーとなる医師や看護師などが協力し、対象患者の特定から二次性骨折リスクのほ評価、治療、転倒予防、その後の患者フォローアップなどを行います。

ある病院でFLSを利用した3年間の追跡調査では、連携先での治療計画、治療中止理由などの実態が明らかになりました。
例えば、入院時に骨粗鬆症治療を行っていた患者様が退院後、骨粗鬆症治療の経験があまりない内科クリニックに通った場合、多剤併用を避けるために骨粗鬆症治療薬の処方が中止されたり、介護老人保健施設に入所した際に医療費の問題で中止された… といったような全体像が把握できたと報告されています。

こういった調査結果をもとに、骨粗鬆症治療の重要性の認識を補うため、地域連携を通じて骨密度検査や治療継続の大切さ、医療費負担の少ない薬剤などについて情報共有した結果、FLSの導入から3年間で「約70%」と高い水準の治療継続率を達成できました。

二次性骨折予防のためのかかりつけ医

二次性骨折の予防には、維持期を担うかかりつけ医の役割が欠かせません。
二次性骨折は、骨折の連鎖から「要支援」「要介護」「寝たきり」というリスクに直結する可能性があり、一次骨折以上に注意が必要です。

しかしながら、脆弱性骨折を起こして専門病院で入院や手術、リハビリを実施してせっかく骨折の治療を終えたものの、その後の骨粗鬆症検査は実施されず、整形外科のクリニックにも紹介されないケースは未だに多いと感じます。
初診の患者様や骨粗鬆症治療目的で来院された方に問診してみると、未治療のまま放置されているケースをちらほら見かけます。

このような状況を改善し,更に骨粗鬆症対策を発展させるためには、かかりつけ医がキーマンになると考えます。
かかりつけ医が骨粗鬆症という疾患をこれまで以上に注目することで、ロコモ予防、サルコペニア予防、ひいては二次性骨折の予防に向けた骨粗鬆症の継続治療が進みます。

大腿骨近位部骨折の患者様の半数以上は、内科のかかりつけの先生にかかっていることが多いので、地域の医師同士の連携も非常に重要となります。
急性期病院や回復期病院で検査が行われ、すでに骨粗鬆症治療が必要と判断されている患者様ですので、骨粗鬆症治療実施の有無ではなく、生活習慣病と併せてこれを管理し、副作用チェックなどを含めた治療の継続を行うことも大切です。

骨粗鬆症診療にあたる整形外科医や内科医師だけでなく、社会全体として二次性骨折予防に関する知識や目的を共有し、患者さんひとりひとりの健康寿命を延伸することに努めることが求められます。

骨粗鬆症検診の費用

①自治体や公共機関の場合

基本的に自治体や公共の場所 (銀行や市役所) で行っている骨粗鬆症検診は、無料または低い料金であることがほとんどです。
参考までに、各自治体のホームページに記載されている検診費用を紹介します。

  • 東京都板橋区 (MD法): 500円 / 70歳以上は無料
  • 大阪府堺市 (QUS法): 500円
  • 大阪府阪南市: 500円
  • 大阪府摂津市: 500円
  • 愛知県名古屋市: クーポン券対象者のみ無料

②医療機関の場合

病院によっては、骨ドックや骨粗鬆症検診を行っているところもあります。
一般的には、問診、採血、レントゲン、骨密度検査などを組み合わせて行われることが多いです。

  • 完全自費診療の場合: 約20,000-40,000円
  • 診察により保険適応と判断された場合: (3割負担なら) 約5,000-10,000円

詳細情報については、各施設にお問い合わせをされることが確実です。

骨粗鬆症検診の受診率

世界でも有数の高齢化率の高い日本では、骨粗鬆症患者は増加傾向です。
2012年時点では、約1280万人の骨粗鬆症患者数が存在すると推計されました。これは当時の日本の人口の10%に相当します。
※男性は約300万人、女性は約980万人。

骨粗鬆症は、症状を自覚することなく骨折をして、そこで初めて診断を受けることが多いため、積極的に検診や病院での受診を行おうという流れになりにくいです。
そのため、骨粗鬆症の検診率も低く、全国平均でもわずか「5%」という低さです。
参考までに、骨粗鬆症財団のホームページに記載されている、年代別の骨粗鬆症検診率へのリンクを紹介します。
公益財団法人 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症検診率

この検診率の低さを、いかに底上げしていくかが今後の課題となるでしょう。
それには個人だけでなく、地域および社会全体としての取り組みが重要となってくると思われます。現に一部の地域や共同体では、徐々にこのような動きが活発になっています。

【参考文献 / 参考サイト】

  • 井上大輔: MSのための続発性骨粗鬆症エッセンシャルズ. The Journal of Japan Osteoporosis Society 9 (1): 9-12, 2023
  • T.Maehara: Experieuce in rebuilding the osteoporosis treatment system by reviewing osteoporosis patients. The Journal of Japan Osteoporosis Society 9 (1): 27-34, 2023
  • 山本智章: 二次性骨折の予防について考える. 骨粗鬆症のoverview. BRIDGE vol.1, 2023
  • 石橋英明: 骨粗鬆症の最新治療 (いまからでも実行できる寝たきりにならない方法)
  • 北里大学メディカルセンター: 骨粗鬆症専門外来開設のお知らせ
  • 公益財団法人 骨粗鬆症財団: 骨粗鬆症検診率
金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

2009年、大阪市立大学医学部卒業後、名古屋第二赤十字病院で研修。大阪に戻りPL病院、リハビリ病院などで研鑽を積む。急性期から慢性期まで経験し、手術だけでなく在宅医療にも携わる。2021年、むつみクリニックを継承開業。