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骨粗鬆症と生活習慣病

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骨粗鬆症と生活習慣病の予防

骨粗鬆症を予防するためには、

  • カルシウムとタンパク質の摂取
  • 日光浴
  • 骨に刺激を与えるウォーキングや筋力トレーニング

が重要です。

また、骨粗鬆症の予防としての栄養摂取、運動療法は、高血圧や肥満、腎臓病を代表とする生活習慣病の予防と通じるところがあります。
参考までに、厚生労働省が作成する生活習慣病予防のためのページを紹介します。
厚生労働省: 生活習慣病予防

上記リンクを見ていただくと、
「骨粗鬆症の予防対策と非常に似ている」
と感じるはずです。

ヒトの体は、生まれた時から骨は延々と新陳代謝を繰り返しています。
骨をつくるには材料となるカルシウムやタンパク質が必要です。骨をつくるために骨芽細胞という細胞が働くためには、材料が必要です。
そのため、骨芽細胞がいくらがんばっても、カルシウムやタンパク質がなければ骨ができません。

日光浴が挙げられているのはなぜかというと、紫外線をあびることで、体内でビタミンDが合成されます。ビタミンDが活性化されることで、カルシウムの吸収が増えるのです。

また、骨には運動も重要となります。
骨に力がかかると骨芽細胞に刺激が加わり、骨をつくるようになります。力がかからなくなると刺激が伝わらなくなり、骨芽細胞は骨をつくることをやめてしまいます。
宇宙飛行士は急激に骨が弱くなる、ということをご存じの方もいるかもしれません。これは、重力をはじめ骨への刺激がなくなることで骨がスカスカになってしまうためです。

そのため、できるだけ早く歩いたり、強い刺激を骨に与えることが重要ですが、これはどなたでも行えるわけではありません。
定期的な骨密度の評価を受けながら、主治医と相談のうえで、栄養摂取、運動を行いましょう。
当院「むつみクリニック」でも、薬物療法だけでなく時にはパンフレットなどを併用しながら、患者様一人一人にあった指導を行っています。

それでは、代表的な生活習慣病である「糖尿病」「慢性腎臓病」と骨粗鬆症との関連を説明していきます。

糖尿病と骨粗鬆症

糖尿病と骨粗鬆症の関係

2型糖尿病は、骨粗鬆症と同様に、年齢とともに増加する生活習慣病です。
高齢化が加速する我が国において、糖尿病と骨粗鬆症を併存する患者はますます増加することが予想されます。

厚生労働省のホームページ (以下リンク) でも、糖尿病の運動療法や食事療法、予防に対して紹介されています。
厚生労働省「e-ヘルスネット」: 標準的な運動プログラム

これまでの研究において糖尿病患者は、骨質が劣化し、骨密度に関わらず骨折リスクが増加する事が明らかになっています。
ひとたび糖尿病患者が骨折を起こしてしまうと、運動能力の低下により運動療法をきちんと行うことが困難となります。
そのため、日常生活動作 (activity of daily living: ADL) や生活の質 (quality of life: QOL) の低下から、糖尿病の治療意欲も低下し、血糖コントロールの悪化につながるという悪循環にいたります。

したがって、糖尿病患者を診察する時には、血糖コントロールだけでなく骨折リスクについても積極的にスクリーニングを行い、骨質劣化の存在を意識することが重要となります。
さらにこれは、上述したように骨密度検査では把握できない場合もあるので注意が必要です。

糖尿病による骨脆弱性

糖尿病では肥満の患者が多く、骨密度検査で測定するBMDが低下しにくいため、以前は「骨粗鬆症になりにくい」と考えられていました。

ところが、今までの研究データなどから、糖尿病は骨折リスクを上昇させることが明らかになったのです。(※参考文献: 1)
糖尿病では、BMDの低下がなくても骨折リスクは上昇するため、糖尿病による骨粗鬆症、骨脆弱性のメカニズムは主に骨質劣化によるものと考えられています。

骨質劣化の仕組みとしては、コラーゲン繊維間に存在する終末糖化産物 (advanced glycation end products: AGEs) の蓄積や、骨微細構造の劣化、骨形成能の低下を主とした骨代謝回転の低下が関連するとされています。
AGEsは、高血糖状態や酸化ストレスが亢進することで生成が促進されます。AGEsが増えると、骨のしなやかさが損なわれ、さらに骨芽細胞や骨細胞の機能を低下させます。

糖尿病による骨代謝回転低下では、AGEsや微小骨折のある質の悪い骨がリモデリングされずに蓄積することで、骨強度が低下するとされています。

糖尿病患者における骨折リスク管理

HbA1c「7.5%以上」の血糖コントロール不良状態は、骨折リスクに関連するとされています。(※参考文献: 2)
そのため、適切な血糖管理により骨折リスクが低下すると考えるのは当然です。
ですが、長期的な血糖管理が骨折リスクを改善させるかどうかについてのエビデンスは、現状ではありません。

現時点では、患者個々の臨床的特徴に基づいて骨折リスクの高い対象者に対して、積極的に骨密度検査、骨粗鬆症治療を開始することを検討していく必要があります。

その際に、糖尿病において骨粗鬆症を引き起こす機序のなかで、主な原因は骨質劣化であるため、骨質を改善させる薬剤が有用であると考えます。
これらの理論は、治療薬剤を検討する際にも良い判断材料となります。

骨粗鬆症を考慮した糖尿病治療

インスリン欠乏状態、インスリン抵抗性の状態、エネルギー代謝が低い状態など、高血糖に至る病態により骨代謝への影響は異なります。

高血糖状態では骨質が落ち、骨密度が高いにも関わらず骨折が増えます。
1型糖尿病患者は、インスリン療法で管理することで骨代謝マーカーが改善することが報告されています。(※参考文献: 3)
2型糖尿病患者においても、血糖コントロールを良好に保つことで、骨代謝マーカーを改善することが報告されています。

The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes study (ACCORD study) という研究では、通常療法群と厳格コントロール群では転倒、骨折頻度に差はなかったことから、いたずらに厳格な血糖コントロールをするのは、骨粗鬆症予防のために必要ではないと考えられます。
ところが、「Rotterdam Study」によるとHbA1c「7.5%以上」の群で骨折リスクが高く、入院患者の転倒外傷はHbA1c「8%以上」で多くなったことから、ある程度のHbA1cを保った血糖コントロールが骨折予防の意味でも重要といえるでしょう。

ここで注意すべき事柄として、糖尿病を治療する過程での減量は骨粗鬆症にとって望ましくない、ということが挙げられます。
痩せ (過度な減量) は、体感的に骨折リスクが増すことはお分かりいただけると思います。
それを示したのが、閉経後の女性で10%以上の減量は骨折リスクが5年間の間増加傾向を示す、という報告になります。(※参考文献: 4)

これらのことから、高齢者における運動療法を伴わない、過度な減量による糖尿病治療は、骨粗鬆症治療の観点からは望ましくないことが分かります。糖尿病患者においては、骨粗鬆症の診断、治療を運動療法や食事療法と同時に考慮する必要があります。

糖尿病と骨粗鬆症のまとめ

糖尿病患者では、原疾患や動脈硬化性病変だけでなく、骨折リスクも念頭に置いたうえで診療にあたる必要があります。

骨密度検査におけるBMDでは、前述のように糖尿病患者において骨質劣化を正確に評価できないため、糖尿病自体が骨折リスク、骨質劣化の原因となることを認識すべきです。
現時点では、脆弱性骨折を起こしたことがある糖尿病患者では、二次性骨折の予防のため早期から骨粗鬆症の治療を介入すべきといえます。
また、一次予防の患者においては、原疾患の治療に加えて骨粗鬆症に対する生活習慣の改善や薬物治療を行うとともに、骨粗鬆症検診や骨密度検査といった積極的なスクリーニングが大切といえるでしょう。

糖尿病患者においては、骨粗鬆症も糖尿病の合併症として捉える必要があり、糖尿病の病態を考慮した早期診断や治療が重要と考えます。

慢性腎臓病と骨粗鬆症

慢性腎臓病 (chronic kidney disease: CKD) は、糖尿病とともに骨折リスクを上昇させる代表的な生活習慣病です。CKDでも特にGFRが60未満、つまりstage3以上の患者様は、副甲状腺機能が亢進し、大腿骨近位部骨折のリスクが上昇します。

さらに、尿毒症や糖尿病合併に伴うサルコペニア、低血糖は、骨密度 (bone mineral density: BMD) の低下に加え、転倒確率も増加させます。そのため骨折リスクも上昇します。

女性ホルモンは、副甲状腺ホルモン (PTH) の骨吸収促進作用を抑えるため、CKD進行に伴う骨折リスクは閉経後女性、閉経前女性、男性の順に増大します。

慢性腎臓病患者の骨密度低下と骨折リスクの関係

2017年に発表された「CKD-MBD」ガイドラインでは、二重エネルギーX線吸収測定 (dual energy X-ray absorption entry: DXA) 法による骨密度評価が骨折リスクを予測する、ということが示されました。
つまり、CKD患者における骨密度低下は、非CKD患者に比べて骨折リスクへの影響が大きいということになります。さらに、年間の骨密度減少率が上がるにつれて骨折リスクを増大させることも分かりました。

これらの結果から、骨密度の低下を防止することが明確な目標となります。

CKD患者の骨密度低下以外の骨折リスク

CKDでは、サルコペニアが好発します。その原因は多岐にわたり、尿毒症やそれに伴う代謝性アシドーシス、食事からのタンパク摂取制限、活性型ビタミンD3低下、頻回の入院や糖尿病の合併などが挙げられます。

サルコペニアにより骨に対する機械的刺激が減少し、皮質骨に孔がたくさん作られ、最終的に皮質骨が菲薄化します。
さらに、サルコペニアによる転倒リスクの上昇に加え、糖尿病合併による低血糖、高血圧症に対する降圧薬の使用、CKDでの夜間排尿回数の増加などにより転倒リスクが上昇すると想定され、これらにより骨折リスクが上昇すると考えられています。

慢性腎臓病 (CKD) での骨粗鬆症治療薬の選択

CKDでは、副甲状腺ホルモンの過剰分泌やサルコペニアによって皮質骨に孔が作られ、最終的に皮質骨が菲薄化します。このことは大腿骨近位部骨折を引き起こします。
そのため、どのような骨粗鬆症の治療薬を選択するかというと、大腿骨近位部の骨折防止が目的となり、皮質骨に薬効の証明された薬剤が選択肢に挙げられます。

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」で示されている皮質骨骨折リスクを低下させる薬剤として、ビスホスホネート製剤とデノスマブが挙げられています。少し古いガイドラインとなりますが、令和5年現在であればこれにロモソズマブが加わります。

ビスホスホネート薬は、ひとたび血液中に吸収されると、骨に沈着して破骨細胞の機能を抑制します。CKD患者では、体内に蓄積することで薬の作用が増強するため、副作用の観点から以前は投与が推奨されていませんでした。
しかし最近では、CKD患者に対するビスホスホネート薬の投与で、骨量増加に伴う骨折リスクの低下が数多く報告されるようになっています。そのためCKD患者でも、骨量増加を骨折リスク軽減のための指標として用いることが可能となりました。

ビスホスホネート薬のうち、腎機能低下を示す患者でも慎重投与が可能なものに、アレンドロネート、イバンドロネート、ミノドロネートなどが挙げられます。
我が国では、リセドロネートはクレアチニンクリアランス (Ccr) が30未満は禁忌となっていることに注意が必要です。

一方で、デノスマブはビスホスホネート薬と異なり、半年ごとの投与で骨形成抑制作用は弱く、無形成骨を発生させるリスクは低いことが示されています。
しかし、薬剤投与後の薬効発現が非常に速く、骨吸収が強力に抑制されることで、骨からのカルシウムやリンの放出が迅速に停止し、血中カルシウムや血中リン濃度が急激に低下します。

血清カルシウム濃度の低下は、腎機能低下に伴ってPTH (副甲状腺ホルモン) 上昇による尿細管でのカルシウム再吸収促進が消失するために、カルシウム値低下が著明となるので注意が必要となります。
そのため、投与後の低カルシウム血症の発症リスクを低減するため、活性型ビタミンD薬を投与することで血清カルシウムをあらかじめ上昇させておくことが大切です。

加えて、骨吸収亢進が長期にわたって強力に続いている患者では、デノスマブ投与前に骨代謝回転の抑制、骨石灰化率を高めておくように一定期間のビスホスホネート薬や選択的エストロゲン受容体モデュレーター (selective estrogen receptor modulator: SERM) 投与などの対応も望ましいと考えられています。
ちなみに、血液透析患者でデノスマブを1年間投与した結果、透析患者でも保存期CKD患者と同様に骨密度は腰椎、大腿骨ともに増加したという報告があります。

次は、PTH治療薬、つまり骨形成促進薬についての説明となります。
PTH治療薬は、無形成骨の頻発するCKD合併骨粗鬆症に対して骨形成を促進する作用があるため、理論的には望ましいものの、血管壁のPTH受容体に作用して血管拡張作用を示すことで血圧低下作用を示します。
しばしば、急に血圧低下が生じるという報告もあり、CKD合併骨粗鬆症患者に対してはPTH治療薬の使用は慎重であるべきといえます。

別の骨形成促進薬であるロモソズマブについては、重大な心血管イベントのリスクがあるとのことで使用にあたっては厳重な注意を要しますが、我が国では骨粗鬆症患者に広く使用されています。
現時点では、今までの市場調査において重篤な心血管イベントを引き起こすリスクはそれほど大きくないと知られています。そればかりか、ロモソズマブ非投与対象群では1年間の期間中、有意な骨密度変化はみられなかったのに対して、投与群では腰椎、大腿骨ともに骨密度に明らかな増加が認められました。

慢性腎臓病と骨粗鬆症のまとめ

慢性腎臓病患者でも、骨折リスクの指標として骨密度が重要であることが示されました。
そのため、骨密度増加を目的とした骨粗鬆症治療薬の投与は理にかなっており、骨折防止も期待できます。

CKD合併骨粗鬆症患者では、PTH (副甲状腺ホルモン) 過剰症やサルコペニアなどが原因で、特に糖尿病を合併している場合は、CKDに伴う皮質骨の多孔化が進みやすくなります。
そのため、皮質骨の骨密度増加効果を有する薬剤投与を考慮することが必要です。
ただし、骨形成抑制効果が持続的で強力なビスホスホネート薬では、無形成骨のリスクが高くなります。

デノスマブやロモソズマブに先立つボスホスホネート薬の投与は、デノスマブやロモソズマブ投与に伴う低カルシウム血症のリスクを軽減することから重要ですが、長期投与は無形成骨の発生を避けるうえで推奨されるものではありません。

さらに、上記で述べた各々の骨粗鬆症の治療薬についても投与方法はさまざまであり、注射 (点滴、皮下注射、自己注射) 、内服 (毎日、週1回、月1回) といった違いがあります。
骨粗鬆症治療薬の副作用として、顎骨壊死も広く知られており、歯医者さんとの連携も欠かせません。これらについては、改めて記事で説明したいと思います。

CKD患者での大腿骨近位部骨折リスクを考慮して、それぞれの薬剤の特長を理解しながら選択し、投与期間を判断することが重要といえるでしょう。

【参考文献】

  • (1) Vestergaard P:Discrepancies in bone mineral density and fracture risk in patients with type 1 and type 2 diabetes-a meta –analysis.Osteoporos Int 18: 427-444,2007
  • Schwartz AV,Vittinghoff E,Bauer DC,et al:Association of BMD and FRAX score with risk of fracture in older adults with type 2 diabetes.JAMA 305: 2184-2192,2011
  • (2) Oei L,Zillikens MC,Dehghan A,et al:High bone mineral density and fracture risk in type 2 diabetes as skeletal complications of inadequate glucose control.The Rotterdam study.Diabetes Care 36: 1619-1628,2013
  • (3) Campos Pastor MM et al:Intensive insulin therapy and bone mineral density in type 1 diabetes mellitus:a prospective study.Osteoporos Int 11: 455-459,2000
  • (4) Compton JE et al:Increase in Fracture Risk Following Unintentional Weight Loss in Postmenopausal Women:The Global Longitudinal Study of Osteoporosis in Women.J Bone Miner Res 31: 1466-1472,2016
  • 金沢一平: 糖尿病合併骨粗鬆症の治療戦略.The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.9 No.1: 86-90,2023
  • 尾形真規子: 糖尿病の合併症としての骨粗鬆症:東女医大誌 第87巻 臨時増刊2号: E142-147,2017
  • 稲葉雅章: 慢性腎臓病(CKD)合併を考慮に入れた高齢者骨粗鬆症疾患患者の治療戦略.The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.9 No.1: 91-93,2023
金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

2009年、大阪市立大学医学部卒業後、名古屋第二赤十字病院で研修。大阪に戻りPL病院、リハビリ病院などで研鑽を積む。急性期から慢性期まで経験し、手術だけでなく在宅医療にも携わる。2021年、むつみクリニックを継承開業。