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骨粗鬆症とは

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骨粗鬆症とは簡単に言うと

骨粗鬆症とは簡単に言うと、
「低骨量と骨梁 (こつりょう) 構造の悪化によって、骨の脆弱性が高い度合いまで進み、骨折しやすい状態
を指します。
臨床症状を有していなくても、「骨脆弱化」が認められれば骨粗鬆症と診断されます。

最近の研究結果では、骨密度以外の要因も骨折リスクに関与することが明らかとなっており、
「骨粗鬆症は、骨強度の低下を特徴として、骨折のリスクが増大しやすくなる疾患
と修正されました。

また、骨粗鬆症は多因子疾患であり、遺伝的要因と生活習慣のような後天的な因子が発症に関与することが分かっています。

医療者でない方にとって骨粗鬆症というと、骨がボロボロになる、骨がスカスカになるといった印象を真っ先に思い浮かべることが多いのではないでしょうか?
しかしながらそのことがもたらす症状であったり、何が危険なのか、原因は何なのか、未然に防ぐにはどのような事に気を付けて生活を送ればよいのか、といった所まで深堀りしてこちらのサイトで説明していきたいと考えています。

骨は人間が生きていくうえで、肺や心臓、肝臓や腎臓と同様に、重要な臓器の一つです。

骨粗鬆症はもはや生活習慣病の1つと捉えられていますが、確立した共通認識はありません。未だに自治体の骨粗鬆症検診も十分な機能を果たしているとは言い難く、人間ドックなどでおこなわれている骨密度検査も正確な診断には不適当な超音波検査を使用している状態です。

その一方で、骨粗しょう症の治療薬の進歩は目覚ましく、適応やコストをしっかり考慮した上で適切な薬剤を投与する事で骨折リスクを減らし健康寿命を伸ばすことが可能になっています。

骨粗鬆症の患者数はどれくらい? 症状は?

日本では、800万~1100万人が骨粗鬆症に罹患していると推計されています。
また、我が国は世界でも有数の高齢国家です。
骨折による要介護や寝たきりを防止しておくことが、将来的な健康寿命の延伸や医療費の抑制につながるといえるでしょう。

骨折をしていない方はたとえ骨粗鬆症であっても無症状ですが、主要な臨床症状は脆弱性骨折による疼痛と骨折後の変形や機能障害です。
例えば腰椎が骨折した方であれば、身長が若いときに比べて縮んだり、背中が曲がって前をむくことがつらい、見た目が恥ずかしいといった訴えをお持ちになる方もいるでしょう。

骨粗鬆症が原因となる骨折は脊椎、大腿骨近位部、橈骨遠位部、上腕骨近位部、骨盤(恥骨、坐骨)、仙骨に多く発生します。
このうち最も発生率が高く、患者数が多いのは脊椎骨折であり、大腿骨近位部骨折がそれに続きます。

脊椎骨折は転倒後に背部痛を主な訴えとして受診する場合と、はっきりとした外傷がない場合があり、後者は『いつのまにか骨折』と呼ばれたりしています。

背部痛を訴えとして骨折が診断されるのは全体の1/3程度であると考えられ、それ以外は患者自身が骨折を自覚しない間に脊椎変形が徐々に進行して次第に腰痛を自覚するようになります。

骨粗鬆症(骨粗しょう症)に伴う脊椎骨折は胸腰椎移行部に好発し、多発性に骨折を生じると腹部膨満感や逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニアなどを併発することがあります。
さらに2cm以上の身長低下があれば、脊椎骨折を強く疑います。

骨粗鬆症の診断と検査

骨粗鬆症の診断にあたっては、腰や背中の痛みを有するさまざまな疾患を鑑別することが大切です。
さらに、低骨量を来たす他の疾患を考えるうえで、問診は非常に重要となります。

痛みを有する例では痛みの部位や程度、急性発症か慢性痛か、起き上がりの際の痛みか安静時の痛みかを確認します。
それ以外にも、閉経状況、骨折の既往(外力の大きさ)、出産歴、外傷歴、運動習慣、食事摂取状況、内服している薬剤を問診で確認します。

必要な検査は大きくわけて血液検査、X線検査(レントゲン検査)、骨密度測定に分けられます。
それぞれの項目について、以下に補足します。

① 血液検査

血清カルシウムやリン、アルカリフォスファターゼを測定します。
また最近では骨代謝マーカー(骨吸収マーカーや骨形成マーカーがあります)もタイミングをみて調べる事で、骨代謝回転を評価し、病態の診断を行って治療薬の選択を行います。

② X線検査

胸腰椎の正面、側面2方向のX線撮影を行います。
腰や背中の痛みを来たす他の疾患との鑑別に重要となります。

③ 骨密度測定

骨密度は測定した部位の骨折リスクを最も良く反映します。
そのため、大腿骨近位部(頚部および転子部)と腰椎(正面)が測定部位として最適となります。この他の部位としては前腕骨、中手骨、踵骨での測定、評価も可能です。

しかしながら測定部位によって骨密度減少の程度に差があるため、評価結果が異なる場合があり注意が必要です。
測定部位によって結果が異なる場合は、最も低いYAM値を診断に用います。また一般的に薬物治療効果のモニタリングには腰椎や大腿骨近位部以外の測定は適していません。

骨折による寝たきりを予防することが大切

過去にこのようなニュースがネット記事で取り上げられました。以下、引用になります。

~骨粗鬆症検診見直しへ 対象拡大、早期に把握、厚労省~

骨量が減り軽い転倒などで骨折しやすくなる「骨粗しょう症」の検診に関し、厚生労働省が実施要領を見直す検討を始めたことが29日、同省への取材で分かった。
対象者拡充も想定し、早期に患者や“予備軍”を把握することで治療や適切な健康管理を促す狙い。政府が掲げる健康寿命の延伸に向け、対策を強化する。

骨粗しょう症は加齢などに伴い、古い骨を壊す細胞と新しい骨をつくる細胞のバランスが崩れることが主要因で起こる。骨がもろくなり、立ち上がる際に体が痛んだり身長が縮んだりすることがある。
お年寄りでは骨折がきっかけで寝たきりになってしまう例もみられる。

※引用元: Yahoo! ニュース「骨粗しょう症検診見直しへ 対象拡大、早期に把握、厚労省」

人間ドックや健康診断などで測定される骨密度検査は、信頼性の高い検査とは決して言えません。
あくまで精密検査を促すための1つの手段として役立っています。

日本人の平均寿命は、世界的にみても長いです。
高齢化率、超高齢化率は高い水準で保たれており、人生100年時代というフレーズもよく目や耳にすることも多いです。
だからこそ、要介護状態に至らず、できる限り健康寿命を延ばそうとする運動、啓発が盛んになっています。生活習慣病をはじめとする内科疾患と同様に骨の健康、骨粗鬆症に対する取り組みも重要です。

当院「むつみクリニック」のような大阪市骨粗鬆症検診精密検査協力医療機関では、大阪市が他企業と連携する骨粗鬆症疾患の啓発運動に参加するよう、依頼を受けております。

具体的には過去の実施データに基づき、骨折既往歴の有無により再骨折リスクの高い市民や、過去に骨粗しょう症の薬物治療歴があるものの、直近の骨粗鬆症治療歴のない市民に対して検査や受診を促します。
その結果として骨折による寝たきりを防止し、市民の健康寿命の延伸につながる事業構築を目指しています。
※対象者: 約10,000名。

50-84歳となる大阪市国民健康保険、あるいは後期高齢者医療保険加入者のうち、レセプトデータを基に以下に該当した大阪市民が対象となります。

  1. 脆弱性骨折の既往があるが、骨粗鬆症の治療歴がない、もしくは治療中断していると推定される方。
  2. 過去に骨粗鬆症の薬物治療歴があるが、直近の数か月間において骨密度検査や骨粗鬆症治療を中断していると推定される方。

骨粗鬆症は治療継続と理解が大切

骨粗鬆症は、高血圧や糖尿病と比べるとまだまだ世間一般には知られていません。
「自分には関係ない事柄」と感じるのは骨粗鬆症に限りませんが、いざ当事者となると今まで対策してこなかったことを悔やんだりする方も一定数おられます。

当ブログがそんな方を一人でも少なくすることに役立てば嬉しいですし、こういった記事をきっかけに自身の健康寿命、食生活、運動習慣などを改めて考えるきっかけとなれば幸いです。

現在増加の一途をたどっている骨粗鬆症の薬物治療は治療開始後1年で約半数しか継続できていません。
脆弱性骨折は骨粗鬆症と密接に関与しており、脆弱性骨折を防ぐためには骨粗鬆症との予防と治療を継続的に行う必要があります。

すでにいくつかの病院や地域では、骨粗鬆症診療を病院全体の取り組みにして、対症を脆弱性骨折患者に絞り骨粗鬆症プロトコルの作成などの骨粗鬆症診療システムの再構築や、地域連携パスを利用した運用方法を見直すなどの工夫をこらして、対象の漏れなく骨密度や血液検査を行うことが可能となっています。

骨粗鬆症で注意したいポイント

骨粗鬆症なんて自分には関係ない、と思っている方でも以下の疾患をお持ちである方は注意が必要です。
以下のいずれもが骨粗鬆症と関連することが証明されています。

  • 糖尿病、高脂血症、喫煙。
  • 心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの動脈硬化性疾患。
  • 慢性腎臓病、甲状腺疾患。
  • ステロイド内服歴または現在使用している方。

さらには、骨粗鬆症で注意しておきたいポイントは以下になります。

  • 60歳代女性の5人に1人は骨粗鬆症。
  • 原因の1つは閉経による女性ホルモンの減少。
  • 骨折は寝たきりなど要介護の大きな原因になる。
  • 骨粗鬆症は自覚症状がなく気づきにくい。

骨粗鬆症と歯の関係

骨粗鬆症治療の薬剤のうち、一定期間使用することで副作用が生じる可能性があります。特に歯科領域で注意すべきものとして「顎骨壊死 (がっこつえし)」と呼ばれる病態があります。

顎骨壊死 (がっこつえし) とは

ビスフォスフォネート剤やデノスマブ、ロモソズマブといった骨吸収抑制作用をもつ薬剤を用いることで生じることが報告され、2016年のポジションペーパーによると発生率は内服のビスフォスフォネートく製剤で10万人あたり1.04-69人/10万人、注射製剤で0-90人/10万人といずれも低く、割合にして0.01%程度となっています。

最近では、
「薬剤関連性顎骨壊死 (medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)」
または、
「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死 (anti-resortive agents-related ONJ:ARONJ)」
と呼ばれています。

顎骨壊死の症状と対処方法

骨吸収抑制薬の使用により顎(あご)の骨の血流が阻害され骨が細菌感染を起こしたり壊死してしまいます。

ビスフォスフォネート製剤をはじめとする骨吸収抑制作用を持つ薬は、骨代謝を抑制しますが、それによって新しい骨や歯茎などを作る機能も抑えることになります。虫歯や歯周病などがあって口腔内環境が悪い状態だと細菌感染を引き起こしやすくなり、最終的に骨が壊死する可能性が高くなります。
そのため、ビスフォスフォネート製剤の投与前には、歯科とも連携し口腔内衛生環境評価しておく必要があります。

いざ、骨吸収抑制薬を使用した後でも、歯科と連携し定期的な口腔内チェックだけでなく、口腔内衛生環境に悪影響を及ぼす喫煙の中止や糖尿病の良好なコントロール、食生活の改善などが必要となります。

閉経時期と高齢期は要注意

閉経期はさまざまな更年期に関わる障害がみられ、骨の健康についても意識する人が増えてきます。
例えば国民健康栄養調査の結果によると、カルシウム摂取量をみれば若年成人よりも閉経期の摂取量が多くなっています。

成年期の骨粗鬆症検診も大切ですが、閉経後の骨粗鬆症検診はさらに重要であり骨の健康状態をチェックすることが不可欠です。
メタボ検診やフレイル検診とあわせて、骨粗鬆症検診を充実させる必要があります。
これには医療機関だけの取り組みでは不充分で、骨折の予防につなげるため医療スタッフ以外に行政機関、保健センターや歯科医師など多職種連携が必要となります。

閉経後の栄養管理で注意が必要なこととして、体重増加のために食事量を減らす人が散見されることです。
例えばコレステロール値を気にするあまり牛乳の飲用を止めてしまうことや、極端な糖質制限食などを行う人が多いです。
若年の方に多くみられるのですが、昨今ではSNSなどで、医学的根拠やエビデンスのないダイエット方法を簡単に真似ることも起きています。

常にバランスのよい食事を心がけ、さらに骨の健康に必要なカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどの多い食品の摂取を心がけるようにしましょう。

高齢期においてはすでに骨粗鬆症と診断されている場合や、既存骨折を有している場合、骨折の治療が必要な場合など、先ほど述べたように骨粗鬆症を対象とした多職種連携の重要性が増します。
この多職種連携は骨粗鬆症リエゾンサービス (OLS:osteoporosis Liaison Service) 活動と呼ばれており、2022年4月時点で、約3,500名の骨粗鬆症マネージャーが登録され活躍しています。
その職種比率は、看護師51%、理学療法士19%、薬剤師16%、診療放射線技師6%、管理栄養士3%、作業療法士2%、その他3%となっています。

高齢期の栄養管理で重要なことは、全身の栄養状態を良好に保つことです。
そのためには適切なエネルギー摂取、つまり体重管理が不可欠になります。

次に、たんぱく質の摂取量を確保するとともにカルシウムやビタミンDなど骨に必要な栄養素の摂取が重要となります。骨粗鬆症の治療薬を服用している場合にも、適量のカルシウムやビタミンDの摂取が欠かせません。
骨粗鬆症だけでなくサルコペニアやフレイル、ロコモティブシンドロームなどを見据えた栄養管理が大切です。

栄養管理は管理栄養士が中心となって展開することが理想ですが、実際の現場では看護師など他職種が栄養管理を行っている場合も多いです。

リエゾンサービスに該当する職種のメンバーだけでなく本人およびそのご家族もが、骨粗鬆症の栄養管理はカルシウムとビタミンDだけでは不充分ということを理解する必要があります。
特に高齢者では低栄養やフレイルの予防も重要であり、適切なエネルギー管理、たんぱく質の摂取が基本となります。骨密度だけでなく、継続的に体重や身体組成(除脂肪量、骨格筋量)を測定することが不可欠です。

医療機関にお早めのご相談を

ご家族の中で腰や背中に痛みや曲がりのある方や、身長が若い時と比べて2cm以上縮んでいる方は、すでに骨粗鬆症を発症して背中の骨の骨折が起きている可能性があります。
さらに女性は閉経をきっかけとして骨量が一気に低下するので定期的に骨粗鬆症検査を受けることも良いでしょう。

お早めの治療が骨折の連鎖を断ち切るために重要ですので、骨の健康チェック(骨密度検査や骨代謝マーカーなどの測定)が可能な医療機関を受診しましょう。
ちなみに当院は、大阪市のホームページにおいて骨粗鬆症の精密検査を行う医療機関、病院として登録されています。

骨粗鬆症は、基本的に症状がないまま進行する疾患ですので、気になる症状がなくても骨の状態を確認することも大切です。
また、普段の生活や閉経などの影響を受ける疾患でもあるため、若いうちから自身の骨量(骨密度)を知っておくことも大切です。
現時点での骨の状態を確認することで、骨密度が低くても食生活や運動で改善を図ることができます。

骨密度は遺伝的要因の影響を受けることもあるので、ぜひご家族と一緒に検査を受けてはいかがでしょうか。
当院は一般整形外科はもちろんの事、骨粗鬆症治療についても専門的かつ一人一人に合った治療、栄養指導などを行なっております。
大阪市の骨粗鬆症精密検査機関として登録されており行政とも提携しております。

問診や検査の結果、全員が薬物治療となる訳ではありません。
検診やドックでの検査結果や、他院での骨密度検査結果などを持参されるとよりスムーズです。お気軽にご相談ください。

【参考文献】

  • 今日の治療指針 第6版
  • 骨粗鬆症の栄養管理と多職種連携 上西一弘 The Journal of Japan Osteoporosis Vol.8 No.3 2022.99-103
金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

投稿者: 金光 廣則

2009年、大阪市立大学医学部卒業後、名古屋第二赤十字病院で研修。大阪に戻りPL病院、リハビリ病院などで研鑽を積む。急性期から慢性期まで経験し、手術だけでなく在宅医療にも携わる。2021年、むつみクリニックを継承開業。